よくある質問(事業・不動産所得)

こんにちは税理士の大倉です。
引き続き好評だった「よくある質問」をお伝えします!

今回のテーマは「事業・不動産所得」です。

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Q 所得税や住民税といった「税」と名の付くのは、すべて必要経費にできるのか。

A 税金の種類によって、必要経費にできる税金とできない税金があります。
○必要経費に「できる」
事業税、印紙税、消費税
事業用の固定資産税、自動車税、登録免許税、償却資産税 など
○必要経費に「できない」
所得税、住民税、相続税、贈与税、延滞税、加算税

Q 事業を営んでいる者が、元請会社へリベートを渡しているが、支払先を明らかにできず、領収書もないとき必要経費にできるか。

A 支出先を明らかにできず、領収書もないときにおいては、帳簿等で支出の記載がされていても、その支出が事業の遂行上必要なものであるか否か判断できないため、必要経費にはできません。

Q アパートを6室貸し、不動産所得で青色申告しているとき、妻に青色事業専従者給与として月10万円を支払い必要経費にできるか。

A 6室の貸付けでは、青色事業専従者給与を適用し、必要経費にすることはできません。
まず、青色事業専従者給与を適用するには、
①不動産の貸付が事業的規模であること
②税務署に青色事業専従者給与を支払う旨の届出をすること
が必要です。

ここでいう①の要件「事業的規模」という条件をクリアするためには、部屋数なら10室以上、もしくは、家屋なら5棟以上であることが必要とされています。
☞青色申告特別控除65万円についても、「事業的規模」という条件をクリアしないと使えません。

Q 60台駐車できる駐車場を不動産管理会社に一括して貸付け、不動産管理会社が複数の
 者に転貸しているとき、形式基準で判定する「事業的規模」になるか。

A 1室の貸付けに相当する土地の貸付け件数を「おおむね5」として判定しています。
よって、『土地5×10室=50』という数値が算出されます。おおむね50以上であれば形式的に事業的規模と判定しています。
しかし、不動産管理会社という一の者に土地を貸付けている場合には、「土地の貸付け1件」として判定することから、事業的規模と判定されません。

Q 家内労働者等の特例は、どのような者がいくら適用できるのか。

A 「家内労働者等」とは、家内労働者、外交員、集金人、検針人、シルバー人材センター
就業者等特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする事業所得又は雑所得を有する人です。
事業所得及び雑所得の金額を計算する際、実額の経費が65万円に満たない場合に65万円を控除するといった特例です。3万円しか経費がなくても65万円を必要経費として差し引けます。ただし、他に給与所得や公的年金がある場合には注意が必要です。
「家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例の適用を受ける場合の必要経費の額の計算書」を申告書と一緒に提出することになります。

Q 青色申告者が家内労働者等の特例を適用して事業所得を計算したとき、青色申告特別控除はできるか。

A 家内労働者等の特例を適用して65万円を必要経費としたときにおいても、青色申告特別控除は適用できます。

Q 自宅で生徒数人を教えているピアノ教師は、家内労働者等の特例の適用はできるか。

A 自宅で生徒を教えている場合、生徒は自身で選べることから、「特定の者に対して継続して役務を提供する。」ことにならないため、家内労働者等に当たらない。
音楽教室内で、委託された生徒を教えている場合は、家内労働者等に当たる。

Q 65万円の青色申告特別控除を受けるためには、どうすればいいか。

A 3つの要件を満たすことが必要です。
① 不動産所得又は事業所得を得る事業を営んでいること
② 正規の簿記(複式簿記)で記帳していること
③ 確定申告の必要書類を法定申告期限内に提出すること(貸借対照表、損益計算書等)

Q 貸借対照表、損益計算書等とともに確定申告書を期限後に提出したとき、65万円の青色申告特別控除を受けることはできるか。

A 65万円の青色申告特別控除は、法定申告期限内に申告書等を提出することが要件ですので、貸借対照表等がきちんとあっても65万円の青色申告特別控除を受けることはできません。
10万円の青色申告特別控除となります。

Q 飲食店を経営している者が、店で使う米、食材、酒類等の一部を家事用に消費したとき、
 自家消費分の仕入代金は、どのようにしたらいいのか。

A 法令上では、事業用の棚卸資産(商品等)を自家消費したときは、その取得価額(取得価額が通常の販売価額の70%に満たないときは、その70%相当額)を収入金額としなければならないのが原則としてあります。
自家消費したときは、経営者に売ったと考えて収入にするというものですが、仕入れの段階で事業用と自家消費分をしっかり区分して、事業主勘定として処理する等、売上原価から控除すべきです。
飲食店等税務調査の際、調査官は、必ず自家消費について聴いてきますから、きちんと処理しておきましょう。

Q マンション賃貸業を営む父が死亡したため、私が、そのマンションを相続し、引き続きマンションを賃貸するため、登記費用、相続税、登録免許税、死亡後に届いた通知書による固定資産税を支払ったとき、不動産所得の必要経費にできるか。

A 
登記費用(○)
相続税(×)
登録免許税(○)
固定資産税(○)

Q FX取引業者が倒産し、保証金が返還されなくなったとき、この保証金はどうしたらいいのか。

A 返還されないことが確定した年分の雑所得の金額を限度として、必要経費にできる。
FX取引は、FX取引を事業として営んでいると認められない限り、雑所得として取り扱われ、この保証金に係る債券は、雑所得の基因となる資産に該当することとなる。

Q インターネット社会に即し、事業の広告宣伝用のHPを開設することとし、制作を委託したときに支払った費用は、支払った年の広告宣伝費として必要経費にできるか。

A 通常は、支払った年の必要経費にできる。ただし、HPの使用期間が1年を超える(1年間更新しない等)ときは、その期間に応じて費用化する。
また、データベースとアクセスできるような高機能を有するHPについては、開発費用が含まれていると認められるので、制作費用のうちソフトウェア開発費用部分は繰延資産として5年間の均等償却となる。
事業の規模に比して多額であるとか、一般相場を大幅に超過するといった事実が認められない広告宣伝用のHPであれば、支払った年の必要経費処理でかまわないと考えるが、安易に考えず顧問税理士ぜひご相談を!

Q 事務所業務の合理化のため、コンピュータ保守料月12万円を払うとともに、保守料とは別にバージョンアップ費用18万円を支払ったとき、支払った年の必要経費にできるか。

A 保守料は、通常の維持管理費用として必要経費にできます。
バージョンアップ費用は、既存のソフトウエアの機能向上のためと考えられ、資本的支出となると判断しますが、20万円未満であることから、支払った年の必要経費にできます。

Q 業績悪化により未払いとなっている青色事業専従者給与3ヶ月分30万円は、青色事業専従者給与として必要経費にできるか。

A 青色事業専従者給与は、所得税法第57条「・・・青色事業専従者・・・その記載されている金額の範囲内において給与の支払を受けた場合には・・・必要経費に算入し・・・」とされています。
したがって、未払いの青色事業専従者給与30万円は、必要経費にできません。

Q 65万円の青色申告特別控除を受けるための複式簿記とは、どのようなものか。

A 10万円の青色申告特別控除は、簡易な簿記による記帳でよいとされています。簡易な簿記というものが、現金出納帳程度の記帳とすれば、正規の簿記(複式簿記)とは、取引ごとに仕訳を行い総勘定元帳、売上帳、経費帳等の帳簿組織を形成していくこととなります。
しかし、やるかやらないかで税金に差が出ることは明かです。どれほどの差になるかを以下に簡易的に示しています。おおよそのイメージでご覧ください。

☞簡易的なものであり、基礎控除のみ考慮しています。諸条件によって、金額は変わります。また、所得税、住民税に加えて、事業税や国民健康保険にも差がでます。
詳しいご相談は、是非税理士へ

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大倉